凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない


 車へ戻ると近くにある複合施設へと向かい、ジュエリーショップへ入店する。
「婚約指輪と結婚指輪を見せてください。予算?いくらでも構いません」
「私は一番安いのでいいです」
「それは俺が嫌なんだ。値段は考えずに美鶴が気に入ったものを選んで」
 テーブルに案内されて、いくつかのジュエリーが運ばれてくると美鶴は遠慮がちに手に取った。
「どれも綺麗ですね。こんなに大きなダイヤモンド、見たことがありません」
「じゃあ、これにしようか?」
「いえ。私はこっちの方がいいかな。シンプルでかわいいし、家事をするのに邪魔にならなそうだから」
 透としては家事はさせるつもりはなかった。今も外注で済ませている。けれど美鶴の気持ちを尊重し、訂正はしないでおいた。
美鶴の選んだ婚約指輪と、結婚指輪を購入しそのまま近くの女性ブランドの店へ入った。白のセットアップとパンプス、バッグを試着し着替えると、連絡しておいたヘアサロンへ向かう。
「あの、透さん……髪の毛までセットして、これからなにかあるんですか?」
 ただの買い物ではないと気が付いたのだろう。黙っていたわけではなく、好ましい話ではなかったから直前に伝えようと思っていたのだ。
「これから、うちの両親に会う予定があるんだ」
 冴木は透の両親から、透が東京へ戻ったら真っ先に連れてくるようにと言いつけられていたようだった。彼にしてみれば絶対に遂行しなければならない業務なのだが、透にとっては厄介ごとでしかなかった。
「突然で申し訳ないが、一緒に行ってくれるか?」
「もちろんです。早いうちにご挨拶には伺わなければと思っていましたし」
「助かるよ。美鶴のことは絶対に守るから安心して」
「? はい」