凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない

羽田空港に着陸した時にはすっかり日が落ちていた。
東京上空の夜景に目を輝かせてた美鶴を連れて飛行機を降り、迎えの車へと乗り込む。
「おかえりなさいませ、社長」
「待たせてすまなかった。安西、まずは区役所へ行ってくれ」
「承知いたしました」
 運転手の安西は透に指示されたとおりに車を向かわせる。美鶴は修学旅行の学生のようにずっと窓の外を見ていた。
「志木さん、あそこに見えるのは東京タワーですか?」
「ああ、そうだよ」
「綺麗ですね……私、本当に東京にきちゃったんだ、すごいなぁ」
 透には見慣れた風景でも美鶴にとっては新鮮なのだろう。夜空に瞬く星がどれほど綺麗だったか、美鶴はいつ気が付くのだろうか。

区役所に到着すると美鶴を連れて時間外窓口へと向かう。機内で仕上げた婚姻届けは無事に受理され、二人は夫婦となった。
こんなにあっけないものなのかと透は思った。自分で思う通りに事が運んで少し怖いくらいだった。これも美鶴が受け入れてくれたおかげだ。感謝してもしきれない。
「美鶴。指輪はどのブランドがいい? 今から買いに行こう」
「ブランドですか? そういうの、よくわからなくて。指輪も買ってもらえるなんて思っていなかったし……志木さんにお任せしてもいいですか?」
「かまわないけど。それと、俺の事は名前で呼ぶようにしてくれるかな?」
「……はい。透さん」
 あまりにもぎこちない呼び方に思わず笑ってしまいそうになる。けれど、顔を赤く染めながら要求に一生懸命に応えてくれる美鶴への尊敬の念の方が勝った。彼女は今、どんな気持ちでいるのだろう。不安や葛藤がないはずがない。それなのに、一切顔に出さず自分についてきてくれる。
「ありがとう、美鶴」
「どういたしまして、透さん」
 照れたように笑った美鶴の顔があまりにもかわいく思えて、透は抱きしめたい衝動にかられる。もし突然抱きしめたら彼女はどう思うだろう。愛のない契約結婚なのだから触れられたくはないだろう。