凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない


「社長、この女性はどういったご関係の……」
 美鶴を連れてタクシーに戻ると、困惑した冴木が目を白黒させていた。
「妻の美鶴だ」
「妻!? 悪い冗談はやめてください。まだ子供じゃないですか」
「ちゃんと成人しているから安心してくれていい。あと、もういいかげん騒ぐのはやめてくれないか。妻が怖がるだろう」
 透が一喝すると冴木は言われたとおりに口を閉じた。
「それから空港へ向かう前に診療所へ寄ってほしい。それと、ナースエイドの派遣をひとり手配してくれ。頼むぞ、冴木」
 この結婚で診療所を退職しなければならなくなったが、どうしてもシフトに穴をあけたくないのだと美鶴は言った。透は次の職員が決まるまで代わりの看護補助者を派遣すると約束した。それから最後に挨拶がしたいという美鶴の願いを聞き入れた。
透は美鶴と共に診療所へ行き、退職に至った経緯と無償で人材を派遣することを約束した。美鶴は別れを惜しみつつ空港へ向かい、東京行の飛行機へ乗り込んだ。