凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない

白川夫妻を事務所へ呼び戻すと、美鶴の口から結婚することにしたと伝えた。
「では、婚姻届けの保証人欄に署名していただけますか?」
 透は冴木に用意させていた婚姻届けをテーブルの上に広げた。さらに結納金として五百万円の小切手を切る。
「こ、こんな大金……いいんですか?」
瑤子はなんとも言えぬ表情で小切手を凝視している。
「少ないとお感じなら遠慮なくいってください。それから、美鶴さんの代わりになるか分かりませんが、明日の朝から経験のある作業スタッフを用意しました。獣医の資格も持っているので牛の管理も可能です。牧場の今後の運営については近いうちに代理の者を寄こしますので改めて打ち合わせをお願いします。なにかご質問は?」
 白川夫妻は二人そろって首を横に振った。
「私は、これからどうすればいいんですか?」
「美鶴は今日このまま東京へ連れていく。急で申し訳ないが、準備をしてきてくれないか?」
「はい」
 美鶴には一切の迷いがないようにみえた。
――繊細そうなのに、意外と肝が据わっているのかもしれないな。
「面白い」と小さく呟いて母屋へ消えていく美鶴の後姿を見送った。