冴木に急かされて受付へ向かった。入院費を支払った後、用意させた菓子折りを見送りの看護師へ手渡す。
「あの。今日、白川さんは?」
「美鶴ちゃん? あの子は体調不良でお休みなんですよ」
「そうですか」
昨日は体調が悪そうではなかった。とすれば心労が祟ったのだろうか。透は昨日の美鶴とのやり取りを思い出し自責の念に駆られる。
「彼女の家は牧場の経営をされているんですよね?」
「そうそう白川牧場。ここから車で三十分くらいかな、割と近いんですよ。志木さんよくご存じですね?」
「ええ、まあ。……では、これで。大変お世話になりました」
冴木が用意したタクシーへ乗り込むと、後部座席に座りシートベルトを締めた。
「白川牧場へ向かってください」
運転手は「分かりました」と言ってカーナビの目的地を変更する。冴木は驚いた様子で透に顔を向けた。
「社長。どこへ向かうつもりですか?牧場? いけません。飛行機の時間に間に合いませんよ」
「仕事だと思って付き合え。航空券はいったんキャンセルにしてくれないか」
「……承知しました」
冴木は言われたとおりに飛行機の予約を取り消した。一度言い出したことは撤回しないことを知っているのでここで言い争うのは不毛だと心得ているのだ。
「この遅れは必ず取り戻していただきますからね。採決していただきたい事案が山のようにあるんですよ」
「わかっている。それより、例のものは持ってきてくれたのか?」
透が聞くと冴木は膝の上に置いていたシルバーのアタッシュケースを持ちあげた。
「はい。この中に入れてあります」
「そうか、ありがとう」
白川牧場の敷地に入ってから数分車を走らせると牛舎と赤い屋根のサイロが見えてくる。透はひとりで車を降り、母屋とみられる建物のインターフォンを押した。
「あの。今日、白川さんは?」
「美鶴ちゃん? あの子は体調不良でお休みなんですよ」
「そうですか」
昨日は体調が悪そうではなかった。とすれば心労が祟ったのだろうか。透は昨日の美鶴とのやり取りを思い出し自責の念に駆られる。
「彼女の家は牧場の経営をされているんですよね?」
「そうそう白川牧場。ここから車で三十分くらいかな、割と近いんですよ。志木さんよくご存じですね?」
「ええ、まあ。……では、これで。大変お世話になりました」
冴木が用意したタクシーへ乗り込むと、後部座席に座りシートベルトを締めた。
「白川牧場へ向かってください」
運転手は「分かりました」と言ってカーナビの目的地を変更する。冴木は驚いた様子で透に顔を向けた。
「社長。どこへ向かうつもりですか?牧場? いけません。飛行機の時間に間に合いませんよ」
「仕事だと思って付き合え。航空券はいったんキャンセルにしてくれないか」
「……承知しました」
冴木は言われたとおりに飛行機の予約を取り消した。一度言い出したことは撤回しないことを知っているのでここで言い争うのは不毛だと心得ているのだ。
「この遅れは必ず取り戻していただきますからね。採決していただきたい事案が山のようにあるんですよ」
「わかっている。それより、例のものは持ってきてくれたのか?」
透が聞くと冴木は膝の上に置いていたシルバーのアタッシュケースを持ちあげた。
「はい。この中に入れてあります」
「そうか、ありがとう」
白川牧場の敷地に入ってから数分車を走らせると牛舎と赤い屋根のサイロが見えてくる。透はひとりで車を降り、母屋とみられる建物のインターフォンを押した。


