凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない

少しうとうとしてしまったらしい。ゆっくりと目を開けると透の顔が見えた。
「美鶴、気分は?」
「さっきよりは、だいぶ」
 点滴をしてもらったおかげか、先ほどよりも体は楽になっていた。
「起きられるようなら帰ろう。家でゆっくり休んだほうがいいだろう?」
 上半身だけ起こしてみた。吐き気はまだあるがどうにか立てそうだ。
「大丈夫だと思います」
「じゃあ、ゆっくりでいいから着替えて待っていて。荷物は町田さんが持ってきてくれたのがここにある。俺もすぐに着替えて車を回してくるから」
 後でお礼の連絡をしなければ。美鶴は着替えて救急科のスタッフにお礼をすると制服をランドリーの袋に入れて救急入り口で透を待った。
 すぐに透の車が目の前に停まった。運転席から降りてきて助手席のドアを開けてくれる。
「気を付けて乗って。ゆっくりでいいから」
「ありがとう、透さん」
 美鶴が乗り込むとドアを閉め、透は慎重に車を発進させる。
「気分がすぐれないようならすぐにいうんだぞ」
「透さん、私もう大丈夫だから。心配しすぎじゃない? それとも検査の結果がよくなかった……とか?」
 言いながら美鶴はそのまさかかもしれないと思った。病院を出る前くらいから透の様子がおかしい。
「もしかして、悪い病気だったの?」
 震える声で聴いた。すると透は黙り込んでしまった。悪い想像ばかりが頭の中を駆け巡る。
「明日、専門医に診てもらってから話すつもりだったんだが……」
「いますぐ教えて! 病名は何? もし、余命僅かだった私はどうしたらいいの?」
「落ち着いて美鶴。そうじゃない」
「じゃあ、なに?」
 透は車を路肩に止めた。そして美鶴をやさしく抱きしめると耳もとでささやいた。
「おなかの子に障るといけないから、落ち着こう」
「……い、いまなんて?」
「採血の結果ででhCGという値が高かったんだ。これは妊娠しているときに上昇するホルモンの数値だよ」
「それって、妊娠しているってこと?」
病気ではないことが分かったが同時に自分の妊娠を知らされて、美鶴は無意識に下腹部に手を当てた。結婚式の後から避妊をしない行為が増えた。妊娠する可能性は理解していたがまさかこんなに早く命が宿るなんて思いもしなかったのだ。
「ああ、おそらくは。明日、知り合いの産婦人科医に診てもらおうと考えていたんだ。受診できるかの返事がきてから話そうと思っていたけど、不安にさせて悪かったな」
 その時丁度、透のスマホに電話がかかってくる。