凄腕救急医は離婚予定の契約妻を湧き立つ情熱愛で離さない


「遅くなってすみません、上野さん」
「まだ休んでいてよかったのに。それより志木さんあんまり顔色がよくないけど、調子悪いの?」
「いえ、大丈夫です」
 そういったものの昼食もあまり食べていないせいか退勤時間間際に床にしゃがみこんだまま動けなくなってしまった。
「志木さん大丈夫? すぐに先生呼んでくるから」
 上野は処置室へ透を呼びに行く。余計な心配はかけたくない。そう思うのに立ち上がることができない。
間もなく透がやってきて美鶴の体を抱き上げる。
「……透さん」
「ごめんな」
「どうして透さんが謝るの?」
「昼に美鶴を診ていたのにこうなることを予測できなかった俺が悪い」
 透は空いているベッドに美鶴を運んだ。カーテンを閉め、人払いをすると美鶴の額に口づける。
「俺がついているから安心しろ」
「はい」
 透は手際よく点滴の針を入れ採血をする。苦手な針の痛みはほとんど感じなかった。
「迷惑かけてごめんなさい」
「そんなことないさ。俺はどんな時でも美鶴のために駆け付けるつもりだよ」
その言葉だけで安心できた。なんて頼りになる夫だろう。
「結果が出るまで少し休んだらどうだ?」
 そう言って透は椅子をもってくると美鶴の傍に座り手を握った。
「透さん、仕事は?」
「もう退勤時間だろ。交代の医師も来ているから大丈夫だよ」
 すこしして江口が様子を見に来た。上野が連絡したのだろう。心配そうにカーテンの隙間から顔をのぞかせる。
「志木さん、ごめんなさいね。無理させちゃったかしら?」
「いいえ、江口さんのせいじゃありません。余計なご心配をかけてしまい申し訳ございませんでした」
「明日は無理しないで休んでちょうだい。志木先生、よろしくおねがいします」
 「おだいじに」そういって江口は出て行った。美鶴は静かに目を閉じる。みんなに迷惑をかけてしまった。ただ、少しだけ吐き気がしていただけなのに。もし重大な病気だったらどうしよう。