「志木さまですね」
「はい」
「お待ちしておりました。どうぞ、お乗りください」
「ありがとうごじざいます。お願いします」
荷物を預け、車に乗り込む。車は十五分ほど走り、海沿いの真新しいホテルに入っていく。青と白を基調とした建物が並ぶさまは写真で見たギリシャのサントリーニ島に似ていてまるで海外旅行に来たような気分になった。
「素敵なホテルですね」
「ありがとございます。今日はプレオープンなんですよ」
「そうなんですか」
正式にオープンしていないホテル。どおりでほかの客がいないわけだ。やがて大きな建物が見えてくるとその前で車は停車した。美鶴は運転手に礼を言って車から降りた。海が近いせいか潮の香りがする。美鶴は深く息を吸い込んだ。
「荷物を置いたら海まで行ってもみようかな」
そういいながら自動ドアをくぐる。大理石の床に高い吹き抜けのあるロビー。真新しいソファーとテーブルが品よく置かれている。美鶴は受付カウンターを探した。すると奥からスーツを着た女性が出てくる。
「志木様。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
美鶴のスーツケースを引いて女性はエレベーターホルヘと歩いていく。


