それがあまりにも不自然な音だったから、俺は少しだけ顔をあげた。




………!



『れいちゃん…?』



何日ぶりだろう。

久しぶりの彼女の姿が目の前にあった。



彼女は俺の声も聞こえていないようにただ、じっと見つめてくる。


そして、


『…最低』


と呟き、ヒールをカツカツ世話しなく鳴らし駆けて行った。




急に虚しさが体中を襲う。



ハッ、渇いた笑いが自然と零れる。

なんだろう。この罪悪感。
俺、なんも悪いことしてないのに…。



最低?

なんでれいちゃんがそんなこと言うの?


俺の事、嫌いになってたんでしょ?


まるで今さっき…失望したみたいな……



れいちゃん、泣いてたな…。




『悠くん…?』


キスしない俺に待ちくたびれたのか、それともさっきのれいちゃんの声が聞こえていたのか。
心配そうに覗き込んでくる。



『…ごめん、』



“やっぱり付き合えない。”




そういい残し、俺はれいちゃんの走って行った方へ全速力で駆け出した。