『そうだ!出てけ!』
一人の大人の声がしたかと思うと、一斉にいろんな席から彼らへ野次が起こった。
そして少し気弱そうな支配人も出て来て…
『申し訳ございません、お客様。他のお客様方に迷惑がかかりますので、お支払いは要りませんので今すぐ出てくようお願いいたします』
支配人らしき人は、丁寧に頭を下げた。
チッ!男の一人が舌打ちをしたかと思うと立ち上がって、
『こんな店もう二度と来るかよ!』
――そう叫んで出ていった。
はあ…何故か俺が安心して溜め息をついていた。
気付いたら、心臓がバクバクいってる。
ハッ、として彼女を見る。
彼女は大丈夫なんだろうか。
『お婆さん、大丈夫ですか?』
………………。
もっと、自分のことを心配したらどうなんだろうか。
彼女は床に倒れるお婆さんに、手を差し延べていた。
柔らかい、優しい笑顔……。
俺は一瞬にして、恋に落ちた。

