すると、メガホンを持った一人が立ち上がり、テーブルに足をつけると…
『みなさん聞きましたー?僕達はここで食べちゃいけないそうですよ〜!』
途端、仲間達がガハガハ笑い始める。
『お姉ちゃんにそんなこと決める権利あんのぉ?』
ニヤニヤ笑いながら、彼女に詰め寄る。
でも彼女は――表情も一切変えずに凛と立っている。
度胸あんなぁ〜…なんて、思いながら俺は一口メロンソーダに口を付けようとした。
そしたら、見えたんだ……
彼女の手が、小刻みに小さく震えていたのが。
『…………』
俺は、呆然とした。
『さっさと出てって!』
彼女の、小さな手はぎゅっとグーに握られて…震えを無理矢理閉じ込めていた。
その瞬間――何故かこんな想いに駆られたんだ。
“彼女を、守りたい”
生きてきて……初めて思った。
誰かを守りたいなんて。
俺は操られるような感覚で、席を立ち上がろうと背もたれに手を付いた。

