個室居酒屋に入って、向かい合わせで座り、ようやく部長の表情を確認する。
やっぱり何だか怒っている……。
入社当初を思い出す、険しい表情が浮かんでいる。
「部長も、居酒屋とか来るんですね。」
何とかしてこの場の空気を変えようと、思い切って私から声をかける。
「佐野は、来るのか?」
一杯目に頼んだビール飲みながら、部長は淡々と聞き返す。
「そうですね。同期とかと、結構来ます。」
部長の眉が僅かに動く。
「それは、橘か?」
突然、予想もしていなかった名前が出て驚く。
何故、今、橘が関係するんだろう?
もしかして、さっきの電話で待たせてしまったことを、気にしているのだろうか。
「勿論、橘もいますが……。それより、さっきは申し訳ありませんでした。」

