「佐野はそういうこと…だと思ってるのか?」
橘の声色が微妙に変化する。
「うん…部長に頼らないようにしてるのは本当だし、私、橘とかには結構甘えちゃったりしてる部分もあるから。」
この間だって、「恋愛ネタくださいっ」って頼み込んでる訳だし。
「佐野、それは… 『朱里』
橘が何か言いかけようとした所で、後ろから私の名が呼ばれる。
振り返ると、すぐ側に部長の姿があった。
時計を見れば、既に約束の時間になっていた。
ここは先約が優先だと思い、慌てて通話を切ろうとする。
「ごめん橘、そろそろ切るね。この後、まだ少し約束があるから。 また今度。」
「え…ああ、そうだよな。 じゃあまた。」
切れたのを確認して、携帯をカバンに仕舞う。

