部長が彼になる5秒前


「私が今まで佐野と仕事をしてきた中で、
これほどまでに"無理だ"と、拒否したものはなかった。」

確かに、今日の私の拒絶は異常でしたが。


「だからきっと、君は"甘える"という行為に、もっと慣れた方がいい。」

真っ直ぐな瞳でそう伝えられ、水瀬部長が私のことを思って言ってくれているのは、よく分かった。

「……精進、します。」

「ああ。ちなみに、、、

手はこのままでいいのか?」

部長の発言に対して、思い出したように自分の右手を見る。
そこには、部長の左手がしっかりと握られているわけで。

「うわぁ!申し訳ありません。」

と飛び退くように、手を離す。