部長が彼になる5秒前


取材先であるテーマパークまでは、車で走ること約3時間。
着くまで、会話がもつか心配だったが、その心配は杞憂に終わった。
何故なら……

「まさか3時間爆睡されるとはな。」

部長は、いつもよりワントーン低い声でそう言って車を降りた。

「申し訳ありませんでした…」

そう、私は前日緊張のあまり眠れなかったことや、早朝準備に時間がかかったこともあり、車の中で深く眠ってしまった。


「大体、車の中で寝るなんて、危機感が無さすぎるんじゃないか?」

「危機感……?」

とは、一体。
ピンときていない私に、部長は溜息をつく。

「まぁ、私がそれだけ信用されているということか。ただ……次は無いと思った方がいい。」