部長が彼になる5秒前


待ち合わせの駅へ向かうと、ロータリーに車を停めた水瀬部長が既に立っていた。

いつものスーツ姿よりラフな格好だったが、上司としての威厳というか厳かな雰囲気は変わらず、すぐに分かる。

私の先入観かもしれないけれど。

「おはようございます。」
私は、後ろから少し緊張気味に挨拶した。

「ああ、おはよう。……へぇ、、、」

振り返った部長が、私の服装をじっと見る。
そんなに、ジロジロみないでほしい…。

今日の服装は、紺のVネックのサマーニットに、花柄スカートという、いつもより女性らしいスタイルになった。

私自身『Venus』のため、普段からファッションに気を遣ってはいるが、こういった "王道"女の子ファッションは、全くしない。


「部長相手だから、可愛いかつ上品に仕上げてみました〜〜」
と、絢は鏡越しに微笑んでいたが、、、


さぁ、部長の反応やいかに。