部長が彼になる5秒前


「課長にもお伝えした通り、言いませんよ。

第一、部長は、恋愛記事に関しては言及しないルールです。」

内心 冷や汗をかきながらも応戦する。

「……そうだったな。」

くすっと笑いながら、部長はスーツのポケットを探り始めた。
どうしたんだろう、と思っていると、
私の目の前に2枚の細長い紙が差し出された。


「"夏イベント"かは分からないが…
…一緒に行くか?」

その言葉を聞いてから、目の前の紙を見る。
黒地に赤い文字が印刷されたその紙には、ゾンビのようなイラストが描かれていた。


「な、なんですか…これ?」
そのインパクトに、私の顔が引き攣る。

「お化け屋敷だ。」

部長が平然とした様子で答えた。