「しないって!同期として応援してるから。 じゃあ私、反対のホームだから、ここで…」 "バイバイ"と、振ろうとした手を掴まれる。 私の手を掴んだ橘は、不敵に笑った。 「佐野、もし本当に恋愛を思い出したいなら、 その時は、誰かに聞いたっていいんだ。」 笑っている割に、橘は真剣な声でそう告げた。 言われたことの意味を考えている内に、 橘はそっと手を離し、 電車に乗り込んでいった。 呆然としながら、夜の春風を浴びる。 しばらく掴まれた手を見つめた後、 私も自身の向かう先のホームへ歩き始めた。