「あるっていうか、好きな奴くらいはいる。」
「橘、乗ってるよ、絢の誘導に。」
「ゔっ!? だから言わねぇって。」
それから、橘はあっさり他の同期の輪に
入っていってしまった。
いるんだ。橘にも、好きな人。
今まで、意外にもその類の話はしていなかったことに気付く。
「好きな人がいるってどんな感じ?」
飲み会の帰り道、同じ方面へと歩く橘に、
思わずそう尋ねた。
「さぁな、実れば嬉しいんだろうけど。」
ってことは、橘も片思いなのだろうか。
同期として、その恋はぜひ応援したい。
「うーん、私にはよく分からないけど、
頑張ってね。あと実ったら教えて!」
「お前、言ったらネタにするつもりだろ。」
そう言う橘の眉間にシワが寄っている。

