「恥ずかしいっていうのは…駄目ですか?」
そう弱々しく呟き、私は俯く。
「駄目だ。これからは恋愛系にも、
挑戦するんだろう?」
部長は、宥めるような声で言った。
そうだった…すっかり目的を忘れていた。
『Venus』を、もっと素敵な雑誌にしたい。
その目的は、明確だ。
………ええいっ!仕事だ。
そう思って腹をくくり、私は顔を上げた。
先程と同じ、真剣な瞳の部長を見て、
髪をゆっくり結び直す。
やはり恥ずかしさに耐えきれず、
顔を背けたくなるが、雑誌の記事通り
肘を大きく上げ、顔を前に向けたまま結ぶ。
その過程でも、相変わらず顎に手を添え
考えるようにこちらを見る部長の視線に、
シュシュを持つ手が震える。

