部長が彼になる5秒前


声のした方向へ振り返ると、

「水瀬チーフ……じゃない、えっと部長?」

「そうだ。今日から部長だな、佐野チーフ」


部長にそう呼ばれ、チーフになった実感が、今まで以上に押し寄せる。


「お疲れ様です。…何故ここへ?」

緊張しつつも、私はそう尋ねた。

「朝、ほとんどここに居られなかったから、
まぁ…事務的確認も含めて戻ってきた。

佐野は…残業か?相変わらず。」


「まぁ、そうですね…」

「その割に、今朝と雰囲気が違うようだが?」


水瀬部長の言葉で、今、自身が
シュシュを片手にはめ、髪を下ろしていることに気づいた。


「申し訳ありませんっ!お見苦しい…」

と、慌てて身だしなみを整えようとすると、