十分だと思いながらも、
そんな事を言われてしまえば、理性は限界で。
「……じゃあ、朱里からキスしてくれる?」
気付けば、欲張りな願いをしていた。
それを聞いた彼女は、頰を染めて俯いた。
やはり照れ屋な彼女に、こんな事を頼むんじゃなかったと、後悔の念が押し寄せる。
「ごめん、やっぱり今の っ……!」
次の瞬間。
"忘れて" と言おうとした自身の口は、朱里の口によって塞がれていた。
その状況を把握した時には、既に朱里の唇は離れていて、目の前には上目遣いでこちらを伺う彼女がいた。
「ちゃんと…お返し、できてますか?」
不安そうに伺う彼女の瞳に、思わず吸い込まれそうになる。
離された唇の熱は、冷めることを知らない。
「駄目。まだ足りない。」

