部長が彼になる5秒前


「今度、私の手料理も食べてもらえたら嬉しいです。練習、しておくので。」

恥じらいながらも私がそう続けると、「それは楽しみだな」と彼は笑った。


こういう何気ないやり取りですら、愛しくて、時々胸が熱くなる。

……要さんといると、自分ばっかり彼を好きになってしまう気がして、駄目だ。
私ばっかり大事にされて、それを返せていないような気がして少し不安になる。


彼が好きだという気持ちの上に不安感が覆い被さる。


「……もう少し飲むか?」
パスタに合うだろうと、要さんが用意してくれていたワインを勧められる。


「じゃあ、、、いただきます」

彼への好意に重なった曇った感情をどうにかしたくて、私はその不安を搔き消すように、ワイングラスに口をつけた。