《短編》翔ちゃんチョコだよちゃんと貰って?


私が翔ちゃんにチョコを渡したのは小6が最後。
自分の気持ちに気付いてなかったあの頃は、家族チョコとして無邪気に渡していたっけ。



それ以降も、イベントとして毎年手作りしてたけど、恋に無自覚だった私は
それを友達や家族、お隣に住む翔ちゃんファミリーに振る舞うだけで終わってた。



中学の頃の翔ちゃんはすごく近寄りがたかったし、当時の私は彼から露骨に避けられていた。



少しずつ離れていく翔ちゃんが恋しかったけど、わざわざ嫌われるようなことはしたくなかった。



だから私にとってのバレンタインは単純にお菓子を手作りする日で、何ひとつ甘ったるい思い出なんてない。



翔ちゃんが毎年どんな女の子からいくつチョコレートを貰ってるか知ろうとしなかったのは
たぶん知りたくなかったから。



今ならあの頃の自分がどうしてその現実から目を背けたのか、痛いくらいわかる。



だって知ればバカみたいに傷付くじゃん。
今思えばあの頃から私は、翔ちゃんのことが大好きだったんだ。



だけど、両想いになれた今年こそは当たり前にチョコを渡せるし、当たり前に受け取ってもらえるんだと勝手に思い込んでた。


何作ろうか迷うのも楽しくて
カレシ持ちの華世ちゃんとあれこれ悩みながら選ぶ買い物も楽しいしかなくて、


お菓子なんて毎年作ってるのにこれを翔ちゃんが食べて美味しいって言ってくれることを想像したら、ニヤニヤが止まらなくて華世ちゃんにいい加減キモいよって言われたくらいなのに。



デレデレしすぎて試作品は失敗したし。
朝はすっごい早起きして髪巻いたりメイク頑張ったりした。


今目の前に広がるこの光景が、これまで現実を見ようとしなかった私へのお仕置きだなんて知らずに。