《短編》翔ちゃんチョコだよちゃんと貰って?

うつむいて、歩き出す。
でも立ち止まって振りかえる。


翔ちゃんの荷物どうしよう。
チョコレート、ここに入れて帰ってしまおうかな。


もう片想いじゃない。
堂々とチョコを渡せるんだと思って朝からドキドキしてたのに。


直接渡したかったのに。
頑張って作ったのに。
美味しそうに食べてくれるとこ、見たかったのに。



ぼんやりうなだれてたら、校庭の脇で起こった耳障りなハウリングにビックリした。



顔を上げたら陸上部から無理矢理奪った拡声器を手にした翔ちゃんが、大きく息を吸うところだった。


《 2年A組宮辺翔、チョコレートいりません!
義理だろうと本命だろうと友チョコだろうと今後一切のチョコレートはもらいません!
えーっと、カノジョからの……平澤美緒からしか欲しくないんで! 》


嘘でしょ?


翔ちゃんは拡声器が必要か? ってくらい大きな声で、ものすごく恥ずかしいこと言ってのけた。