職員室で話を済ませ、今は朝の会。
転入生・有村穂乃夏は、先生に名前を呼ばれるのを待って、ドアの前に立っている。
有村穂乃夏)
「(どうしよう。緊張する〜!?……ん?何か聞こえる……)」
生徒①)
「せんせ〜い」
5-A担任)
「何かしら?」
生徒①)
「男子ですか〜?女子ですか〜?」
5-A担任)
「そんな事を聞く必要があるの?」
生徒①)
「あります。男子か女子かで俺が転入生に向ける態度が変わるから重要です」
5-A担任)
「態度を変えちゃいけません。とりあえず、女の子です」
生徒①)
「よっしゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
ドアの前、廊下側。
有村穂乃夏)
「(さすが異色の初等部……。変な人がいるよ〜。不安しかないんだけど……)」
この学園の初等部は、『異色の初等部』と言われており、かなりの変人がたくさん存在するらしい。
生徒②)
「先生。その子はわたくしより美しくって?」
5-A担任)
「え〜?先生、そういうの興味な〜い」
有村穂乃夏)
「(先生まで変というか、なんかみんな自由すぎる!それに何その質問!?)」
数十秒後……。
5-A担任)
「じゃあ、有村さん。入ってください」
有村穂乃夏)
「(入りずれぇわ!散々詮索されて、のこのこ入れるか〜!)」
5-A担任)
「有村さん、どうぞ……」
有村穂乃夏)
「(圧力かけてるよね!?担任の先生怖いよ〜)は、はぃ」
小さく返事をして、ドアを開ける。
有村穂乃夏)
「(見てる!みんなが見てる。変人の餌食になるのかな〜、あはは……)」
5-A担任)
「では、有村さん。自己紹介を」
有村穂乃夏)
「あ、有村穂乃夏です。好きな食べ物は……えっと、スイカです。よろしくお願いします」
シ〜ン……。
有村穂乃夏)
「(やっちゃったよね〜。イジメられる、絶対、確実に、100%の確率で)」
生徒の大半)
「「(テンパっちゃってる〜……)」」
5-A担任)
「じゃあ有村さんの席は……好きなとこに座って」
生徒③)
「あ、先生めんどくさがってるでしょ」
5-A担任)
「そんなことないです(怒)」
有村穂乃夏)
「(先生怒ってるけど、確かにめんどくさがってるよね?普通席指定しないの?)」
有村穂乃夏、窓側から二列目。後ろから4番目の席に座る。
黒 板
○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○
○ 穂 ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○
↑窓側 廊下側↑
キーンコーンカーンコーン……。
5-A担任)
「チャイムがなったので、朝の会終わりです♩」
有村穂乃夏)
「(なんか先生嬉しそう……)」
5-A担任)
「休み時間は楽しんでくださいね〜。じゃっ、先生はこれで」
そう言った担任は、勢いよくドアを開けて、走り去っていった。
有村穂乃夏)
「(早っ!ていうか、転入生一人にしないでよ〜(泣))」
?)
「なあなあ、転入生、仲良くしようぜ」
有村穂乃夏)
「へっ!?(しまった。変な声が……)」
?)
「何変な声出してんだよ。あ、こういう時は自問自答だっけ?」
有村穂乃夏)
「それ、自問自答じゃなくて、自己紹介じゃない?」
?)
「あ、そうそれ、俺、緑黄色ないんだよな。悪い。」
有村穂乃夏)
「緑黄色?」
?②)
「そいつの言うことは気にしなくていいから。あと、『緑黄色』じゃなくて『記憶力』だからな」
有村穂乃夏)
「(クール〜。というか、それって記憶力なさ過ぎでしょ!)」
?)
「そう!それだ!おっと、本題を忘れるとこだった。俺の名前は……」
有村穂乃夏)
「名前は?」
?)
「名前は……なんだっけ?おい雅志(マサシ)〜、俺の名前なんだっけ?」
?②)
「雅志はお前だバカ」
橘雅志)
「そうだ!俺、橘(タチバナ)雅志!よろしくな、転入生」
有村穂乃夏)
「ど、どうも」
有村穂乃夏の心の中は、不安でいっぱいになる。
橘雅志)
「おい、お前もちゃんとしろよ!」
?)
「はぁ〜……。緋室橙里(ヒムロ トウリ)だ。よろしく……ぁ〜、以後、お見知り置きを」
有村穂乃夏)
「よ、よろしく。というか、何で言い直したの?」
緋室橙里)
「いや、キャラ設定の提示は、大事かなって思ったから」
有村穂乃夏)
「ああ、そっか。クールな子って、そういう挨拶しそうだもんね。でもそれ、普段使いしてる小学生ってかなり稀だと思う」
緋室橙里)
「確かにその意見も一理あるが、今後の読者のためにも……」
有村穂乃夏)
「うわあぁぁぁ〜!それ、タブーだよ!言っちゃダメなやつ!」
橘雅志)
「さっきからお前ら何言ってんだ?」
有村穂乃夏)
「理解できてないそういうところ、ちょっと羨ましく感じてきた(泣)」
橘雅志)
「?意味わかんねえの」
カツカツカツカツ……。
足音が三人の元に近づく。
その数……二人。
?)
「あなたが新しい転入生ですわね。【くんくん】庶民の香りしかしませんわ!」
有村穂乃夏)
「(な、なんか感じ悪っ!)人の匂いとか嗅がないでよ」
?)
「まあ、何なのかしら?あなた、何様のつもり?」
有村穂乃夏)
「そっちこそ何!?失礼だって言っただけじゃない。何様も何もないわよ」
?)
「雫、いつものお願いしますわ」
雫?)
「yes、マスター」
偉そうな?が命じると、隣にいた雫?が消えた。
有村穂乃夏)
「えっ!?き、消えた!?……っ」
?)
「やはり、庶民は大したことありませんわね。雫に手も足も出ない」
有村穂乃夏)
「(何この子?力強っ。というか、なんか武道とかにありそうな技で、体がガッチリかためられてる!動けないよ〜……ん?でも、めちゃくちゃいい匂い。よく見れば、この子、サラサラだけど、ちょっと触れるとフワフワしてる長い髪に、クリクリの大きな瞳……めっちゃ美形!)」
生徒①)
「今日も綺麗ね」
生徒②)
「本当。雫様、今日も整った顔立ち」
生徒③)
「思わず見とれちゃうわよね」
有村穂乃夏)
「(やっぱりこの子人気者なんだ。なんかこれはこれでラッキーかも。そんな人気者の女の子とこんな至近距離にいるなんて……ニヒヒ)」
?)
「な、何なんですのこの庶民!ちょっとは反抗しようとか考えないんですの?」
雫?)
「マスター、いかが致しますか?」
生徒①)
「マスターですって。やっぱり雫様の口から出るあの言葉は聞くだけで至福のひと時だわ」
生徒②)
「主従関係で雫様と結ばれる麻莉奈(マリナ)様。本当に羨ましい〜」
有村穂乃夏)
「(やっぱそういう関係なんだ)」
麻莉奈?)
「雫、その者から離れなさい!」
雫?)
「yes、マスター」
雫?は、有村穂乃夏から離れ、麻莉奈?の左側という定位置についた。
麻莉奈?)
「またこのパターンですの!?お金持ちの私をバカにして!……背が低いからって私をバカにするなんて、庶民のくせに生意気ですわ!」
有村穂乃夏)
「……は?」
北条麻莉奈)
「私は北条(ホウジョウ)麻莉奈。あの有名な北条グループの令嬢ですわ。あなたとは比べ物にならないくらい偉い立場なんですわよ!」
有村穂乃夏)
「だ……だから?」
北条麻莉奈)
「ん〜〜(怒)庶民って何でこんなにバカなのかしら!?」
有村穂乃夏)
「そんなにバカじゃないもん」
北条麻莉奈)
「なら、問題ですわ」
有村穂乃夏)
「は?(バカじゃないってことをいちいち証明しなくちゃいけないの!?面倒くさいよ〜)」
北条麻莉奈)
「たったの一問ですわ。まさか、できないなんて、残念なこと、言いませんわよね?」
有村穂乃夏)
「わ、わかってるよ。ちゃ、ちゃんと答える……ちゃんと……」
橘雅志)
「おっと、転入生!不安なのかぁ?」
有村穂乃夏)
「そ、そんなこと……」
緋室橙里)
「動揺が言動にだだ漏れだ」
有村穂乃夏)
「やめて、緋室君!私は、同様なんてするキャラじゃないよ〜!」
北条麻莉奈)
「静かにしてくださらない!?問題ですわ。マーキュリー計画とアポロ計画の間に行われたNASAの二度目の有人宇宙飛行計画の名称は何でしょう?」
……………………。
有村穂乃夏)
「(わかるわけないでしょ!なにその問題ムズすぎる。小学生レベルじゃないよ)」
北条麻莉奈)
「まさか、この程度の問題も答えられないなんて……仰らないわよね?」
有村穂乃夏)
「(何この子、天才?天才なの!?そんな問題誰にも……)」
生徒①)
「結構、麻莉奈様って優しいわよね。あんな簡単な問題出すなんて」
有村穂乃夏)
「(か、簡単ですと!?)」
橘雅志)
「俺、全然わかんね」
有村穂乃夏)
「(ですよね!……っは!待てよ。ここでわからないって言ったら、橘君レベルで記憶力ないみたいじゃん!ぅぁあ〜)」
緋室橙里)
「この前のテストに出ていたな」
有村穂乃夏)
「(こんな難しい問題が、小学生のテストに!待てよ、今は五年生が始まったばかりの春で、前のテストってなると、この問題を四年生の時に解いたの!?)」
緋室橙里)
「ああ、解いた」
有村穂乃夏)
「緋室君、私の心の中読まないで」
緋室橙里)
「悪いが、驚きを隠せず、考えていることが丸わかりのその表情を見て、誰もがツッコミをせずにはいられないと思う」
有村穂乃夏)
「な、何それ……」
北条麻莉奈)
「早くしてくれませんこと?休み時間が終わってしまいますわ」
北条麻莉奈は、手首に身につけた腕時計を確認し、顔を歪める。
有村穂乃夏)
「(そっか。ここでやり過ごせば、授業時間になって……)」
北条麻莉奈)
「何かやましい事でも考えているのかしら?“ズル”なさるおつもり?」
有村穂乃夏)
「【ギクッ】」
北条麻莉奈)
「まあ(笑)庶民のためにと容易な問題を出題したのに、答えられない、と」
有村穂乃夏)
「わ、わかる!えっと……計画の名称だから……う、宇宙計画!」
生徒の大半)
「「「(力任せに言ってる……)」」」
北条麻莉奈)
「ハズレですわ」
有村穂乃夏)
「そ、即答!」
北条麻莉奈)
「雫、答えを」
雫?)
「yes、マスター。答えは、ジェミニ計画です」
有村穂乃夏)
「そ、そんなの知らないよ〜」
北条麻莉奈)
「やはり、バカだからだったのですわ。バカだから、私の背を侮辱したんですわね(怒)」
有村穂乃夏)
「だから、何それ。私、背のことなんて一言も……」
北条麻莉奈)
「お黙りなさい庶民!無礼者!私の背は……私の背は……ふぇっ(泣)」
有村穂乃夏)
「な、泣いてる!?しかもガチ泣き」
橘雅志)
「転入して早々泣かせるなんて、転入生ヤバ〜イ(笑)」
有村穂乃夏)
「私!?別に泣かせるつもりなんて」
緋室橙里)
「無自覚が一番最低だ」
有村穂乃夏)
「ひ、緋室君……。あなたのひと言で私は今にも消え入りそうよ……ぁはは」
北条麻莉奈)
「言っときますけど!私のこの背は、ただ……親譲りなだけですわ!」
有村穂乃夏)
「い、いきなり!?でも、そんなに気にしなくても……」
北条麻莉奈)
「周りは皆、身長が140cm以上ありますのに、私は、136cmですわ。……あなただって、心の中では笑っているんですわ!ふんっ、行きますわよ、雫」
雫?)
「yes、マスター」
二人はスタスタと廊下に向かって歩く。
有村穂乃夏)
「(私、そんなに悪いことしたかな?)」
そこに、雫?が近づいてきて、有村穂乃夏の耳元で囁く。
転入生・有村穂乃夏は、先生に名前を呼ばれるのを待って、ドアの前に立っている。
有村穂乃夏)
「(どうしよう。緊張する〜!?……ん?何か聞こえる……)」
生徒①)
「せんせ〜い」
5-A担任)
「何かしら?」
生徒①)
「男子ですか〜?女子ですか〜?」
5-A担任)
「そんな事を聞く必要があるの?」
生徒①)
「あります。男子か女子かで俺が転入生に向ける態度が変わるから重要です」
5-A担任)
「態度を変えちゃいけません。とりあえず、女の子です」
生徒①)
「よっしゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
ドアの前、廊下側。
有村穂乃夏)
「(さすが異色の初等部……。変な人がいるよ〜。不安しかないんだけど……)」
この学園の初等部は、『異色の初等部』と言われており、かなりの変人がたくさん存在するらしい。
生徒②)
「先生。その子はわたくしより美しくって?」
5-A担任)
「え〜?先生、そういうの興味な〜い」
有村穂乃夏)
「(先生まで変というか、なんかみんな自由すぎる!それに何その質問!?)」
数十秒後……。
5-A担任)
「じゃあ、有村さん。入ってください」
有村穂乃夏)
「(入りずれぇわ!散々詮索されて、のこのこ入れるか〜!)」
5-A担任)
「有村さん、どうぞ……」
有村穂乃夏)
「(圧力かけてるよね!?担任の先生怖いよ〜)は、はぃ」
小さく返事をして、ドアを開ける。
有村穂乃夏)
「(見てる!みんなが見てる。変人の餌食になるのかな〜、あはは……)」
5-A担任)
「では、有村さん。自己紹介を」
有村穂乃夏)
「あ、有村穂乃夏です。好きな食べ物は……えっと、スイカです。よろしくお願いします」
シ〜ン……。
有村穂乃夏)
「(やっちゃったよね〜。イジメられる、絶対、確実に、100%の確率で)」
生徒の大半)
「「(テンパっちゃってる〜……)」」
5-A担任)
「じゃあ有村さんの席は……好きなとこに座って」
生徒③)
「あ、先生めんどくさがってるでしょ」
5-A担任)
「そんなことないです(怒)」
有村穂乃夏)
「(先生怒ってるけど、確かにめんどくさがってるよね?普通席指定しないの?)」
有村穂乃夏、窓側から二列目。後ろから4番目の席に座る。
黒 板
○ ○ ○ ○ ○ ○
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○ 穂 ○ ○ ○ ○
○ ○ ○ ○ ○ ○
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↑窓側 廊下側↑
キーンコーンカーンコーン……。
5-A担任)
「チャイムがなったので、朝の会終わりです♩」
有村穂乃夏)
「(なんか先生嬉しそう……)」
5-A担任)
「休み時間は楽しんでくださいね〜。じゃっ、先生はこれで」
そう言った担任は、勢いよくドアを開けて、走り去っていった。
有村穂乃夏)
「(早っ!ていうか、転入生一人にしないでよ〜(泣))」
?)
「なあなあ、転入生、仲良くしようぜ」
有村穂乃夏)
「へっ!?(しまった。変な声が……)」
?)
「何変な声出してんだよ。あ、こういう時は自問自答だっけ?」
有村穂乃夏)
「それ、自問自答じゃなくて、自己紹介じゃない?」
?)
「あ、そうそれ、俺、緑黄色ないんだよな。悪い。」
有村穂乃夏)
「緑黄色?」
?②)
「そいつの言うことは気にしなくていいから。あと、『緑黄色』じゃなくて『記憶力』だからな」
有村穂乃夏)
「(クール〜。というか、それって記憶力なさ過ぎでしょ!)」
?)
「そう!それだ!おっと、本題を忘れるとこだった。俺の名前は……」
有村穂乃夏)
「名前は?」
?)
「名前は……なんだっけ?おい雅志(マサシ)〜、俺の名前なんだっけ?」
?②)
「雅志はお前だバカ」
橘雅志)
「そうだ!俺、橘(タチバナ)雅志!よろしくな、転入生」
有村穂乃夏)
「ど、どうも」
有村穂乃夏の心の中は、不安でいっぱいになる。
橘雅志)
「おい、お前もちゃんとしろよ!」
?)
「はぁ〜……。緋室橙里(ヒムロ トウリ)だ。よろしく……ぁ〜、以後、お見知り置きを」
有村穂乃夏)
「よ、よろしく。というか、何で言い直したの?」
緋室橙里)
「いや、キャラ設定の提示は、大事かなって思ったから」
有村穂乃夏)
「ああ、そっか。クールな子って、そういう挨拶しそうだもんね。でもそれ、普段使いしてる小学生ってかなり稀だと思う」
緋室橙里)
「確かにその意見も一理あるが、今後の読者のためにも……」
有村穂乃夏)
「うわあぁぁぁ〜!それ、タブーだよ!言っちゃダメなやつ!」
橘雅志)
「さっきからお前ら何言ってんだ?」
有村穂乃夏)
「理解できてないそういうところ、ちょっと羨ましく感じてきた(泣)」
橘雅志)
「?意味わかんねえの」
カツカツカツカツ……。
足音が三人の元に近づく。
その数……二人。
?)
「あなたが新しい転入生ですわね。【くんくん】庶民の香りしかしませんわ!」
有村穂乃夏)
「(な、なんか感じ悪っ!)人の匂いとか嗅がないでよ」
?)
「まあ、何なのかしら?あなた、何様のつもり?」
有村穂乃夏)
「そっちこそ何!?失礼だって言っただけじゃない。何様も何もないわよ」
?)
「雫、いつものお願いしますわ」
雫?)
「yes、マスター」
偉そうな?が命じると、隣にいた雫?が消えた。
有村穂乃夏)
「えっ!?き、消えた!?……っ」
?)
「やはり、庶民は大したことありませんわね。雫に手も足も出ない」
有村穂乃夏)
「(何この子?力強っ。というか、なんか武道とかにありそうな技で、体がガッチリかためられてる!動けないよ〜……ん?でも、めちゃくちゃいい匂い。よく見れば、この子、サラサラだけど、ちょっと触れるとフワフワしてる長い髪に、クリクリの大きな瞳……めっちゃ美形!)」
生徒①)
「今日も綺麗ね」
生徒②)
「本当。雫様、今日も整った顔立ち」
生徒③)
「思わず見とれちゃうわよね」
有村穂乃夏)
「(やっぱりこの子人気者なんだ。なんかこれはこれでラッキーかも。そんな人気者の女の子とこんな至近距離にいるなんて……ニヒヒ)」
?)
「な、何なんですのこの庶民!ちょっとは反抗しようとか考えないんですの?」
雫?)
「マスター、いかが致しますか?」
生徒①)
「マスターですって。やっぱり雫様の口から出るあの言葉は聞くだけで至福のひと時だわ」
生徒②)
「主従関係で雫様と結ばれる麻莉奈(マリナ)様。本当に羨ましい〜」
有村穂乃夏)
「(やっぱそういう関係なんだ)」
麻莉奈?)
「雫、その者から離れなさい!」
雫?)
「yes、マスター」
雫?は、有村穂乃夏から離れ、麻莉奈?の左側という定位置についた。
麻莉奈?)
「またこのパターンですの!?お金持ちの私をバカにして!……背が低いからって私をバカにするなんて、庶民のくせに生意気ですわ!」
有村穂乃夏)
「……は?」
北条麻莉奈)
「私は北条(ホウジョウ)麻莉奈。あの有名な北条グループの令嬢ですわ。あなたとは比べ物にならないくらい偉い立場なんですわよ!」
有村穂乃夏)
「だ……だから?」
北条麻莉奈)
「ん〜〜(怒)庶民って何でこんなにバカなのかしら!?」
有村穂乃夏)
「そんなにバカじゃないもん」
北条麻莉奈)
「なら、問題ですわ」
有村穂乃夏)
「は?(バカじゃないってことをいちいち証明しなくちゃいけないの!?面倒くさいよ〜)」
北条麻莉奈)
「たったの一問ですわ。まさか、できないなんて、残念なこと、言いませんわよね?」
有村穂乃夏)
「わ、わかってるよ。ちゃ、ちゃんと答える……ちゃんと……」
橘雅志)
「おっと、転入生!不安なのかぁ?」
有村穂乃夏)
「そ、そんなこと……」
緋室橙里)
「動揺が言動にだだ漏れだ」
有村穂乃夏)
「やめて、緋室君!私は、同様なんてするキャラじゃないよ〜!」
北条麻莉奈)
「静かにしてくださらない!?問題ですわ。マーキュリー計画とアポロ計画の間に行われたNASAの二度目の有人宇宙飛行計画の名称は何でしょう?」
……………………。
有村穂乃夏)
「(わかるわけないでしょ!なにその問題ムズすぎる。小学生レベルじゃないよ)」
北条麻莉奈)
「まさか、この程度の問題も答えられないなんて……仰らないわよね?」
有村穂乃夏)
「(何この子、天才?天才なの!?そんな問題誰にも……)」
生徒①)
「結構、麻莉奈様って優しいわよね。あんな簡単な問題出すなんて」
有村穂乃夏)
「(か、簡単ですと!?)」
橘雅志)
「俺、全然わかんね」
有村穂乃夏)
「(ですよね!……っは!待てよ。ここでわからないって言ったら、橘君レベルで記憶力ないみたいじゃん!ぅぁあ〜)」
緋室橙里)
「この前のテストに出ていたな」
有村穂乃夏)
「(こんな難しい問題が、小学生のテストに!待てよ、今は五年生が始まったばかりの春で、前のテストってなると、この問題を四年生の時に解いたの!?)」
緋室橙里)
「ああ、解いた」
有村穂乃夏)
「緋室君、私の心の中読まないで」
緋室橙里)
「悪いが、驚きを隠せず、考えていることが丸わかりのその表情を見て、誰もがツッコミをせずにはいられないと思う」
有村穂乃夏)
「な、何それ……」
北条麻莉奈)
「早くしてくれませんこと?休み時間が終わってしまいますわ」
北条麻莉奈は、手首に身につけた腕時計を確認し、顔を歪める。
有村穂乃夏)
「(そっか。ここでやり過ごせば、授業時間になって……)」
北条麻莉奈)
「何かやましい事でも考えているのかしら?“ズル”なさるおつもり?」
有村穂乃夏)
「【ギクッ】」
北条麻莉奈)
「まあ(笑)庶民のためにと容易な問題を出題したのに、答えられない、と」
有村穂乃夏)
「わ、わかる!えっと……計画の名称だから……う、宇宙計画!」
生徒の大半)
「「「(力任せに言ってる……)」」」
北条麻莉奈)
「ハズレですわ」
有村穂乃夏)
「そ、即答!」
北条麻莉奈)
「雫、答えを」
雫?)
「yes、マスター。答えは、ジェミニ計画です」
有村穂乃夏)
「そ、そんなの知らないよ〜」
北条麻莉奈)
「やはり、バカだからだったのですわ。バカだから、私の背を侮辱したんですわね(怒)」
有村穂乃夏)
「だから、何それ。私、背のことなんて一言も……」
北条麻莉奈)
「お黙りなさい庶民!無礼者!私の背は……私の背は……ふぇっ(泣)」
有村穂乃夏)
「な、泣いてる!?しかもガチ泣き」
橘雅志)
「転入して早々泣かせるなんて、転入生ヤバ〜イ(笑)」
有村穂乃夏)
「私!?別に泣かせるつもりなんて」
緋室橙里)
「無自覚が一番最低だ」
有村穂乃夏)
「ひ、緋室君……。あなたのひと言で私は今にも消え入りそうよ……ぁはは」
北条麻莉奈)
「言っときますけど!私のこの背は、ただ……親譲りなだけですわ!」
有村穂乃夏)
「い、いきなり!?でも、そんなに気にしなくても……」
北条麻莉奈)
「周りは皆、身長が140cm以上ありますのに、私は、136cmですわ。……あなただって、心の中では笑っているんですわ!ふんっ、行きますわよ、雫」
雫?)
「yes、マスター」
二人はスタスタと廊下に向かって歩く。
有村穂乃夏)
「(私、そんなに悪いことしたかな?)」
そこに、雫?が近づいてきて、有村穂乃夏の耳元で囁く。