会うのは久しぶり。
話すのも久しぶり。
会いに行くのは初めて。
何しに行くん?って聞かれたら特に用事も無いし、そこで欲しいものがあるわけでもない。
でも、何の前触れもなく思い出したこととか、あの日の言葉とか、行こうかなと思ったこととか全部ひっくるめて勝手に足が動いてた。
「で、どこ行くん?」
「ん~、ちょっと」
どこって言われても…まぁ言えばいい話なんやけど、別にそこじゃなくても買えるわけで、なんでわざわざここ?て言われたら引き返さんとあかん気がしたから少し濁した。
この辺り初めて!と騒ぐ圭ちゃんは左右に並んだショップを行ったり来たりして、あまりにも見たそうやったから、「あたし、この一番端のショップにおるから」と言うと、わかった!と顔も見ずに消えた。
一番端のショップ。
通るのは2度目。
来るのも2度目。
でも一人で来たのは初めて。
昨日の電話で念を押されたことを思い出したけど、せっかく来たし、と躊躇した手をドアにかけて店内に入った。
店内は相変わらず外装からは想像できんくらい広くて、BGMにはジャズが流れてた。
真っ正面にはレジがあって、そこにおるはずの人がおらん。
店からっぽにして奥に行ってんの?と余計なお世話が働いて真っ直ぐレジの方に歩いていくと突然左腕を勢いよく引かれた。
「……?!」
驚くあまり声も出んくて、その正体を確認すると、
「久しぶり」
前回とは雰囲気が全く違う店長がおった。
初めて会った時は無愛想で無精髭が生えてて一言で言えばモサイ感じやったのに、今は髪も短くすっきりして無精髭も無くて黒ぶち眼鏡で若く見えた。
「・・・店長?」
思わず確認してしまうほどの変わりっぷりに店長は笑って、「そうだよ」と言った。
「そろそろ来る頃だと思ってた」
そう言うと店長はあたしを残して奥に入り、数分後にはあの日と同じようにコーヒーを2つ持ってきた。
今日はすでに椅子が置かれてて座るよう目で促されて荷物を足元に置いてから腰掛けた。
ありがとうございます、とコーヒーを一口飲むと目があった。
なんていうか、引き付けられるっていうか、目力がすごい。
その視線に捕まっただけで身動き出来んくなるって感じ。
まさか目が合うとは思わんかったあたしはなんで?て思いながらも、いつそらしてくれるんか考えてたらスッと視線が緩まった。
「で、何しに来た?」
緩まったと思ったら一番辛い質問が飛んできた。
ここに来た理由なんか当然ない。
急に店長の顔とあの別れ際に言うた言葉を思い出したら勝手に足が動いてた。
CDを買う予定もオススメを聞きにきたわけでもない。
今更やけど、なんで来たんやろう?て自分でも思う。
「まさかアレ本気にした?」
店長の言うアレはあの時の言葉の事やと思ったあたしはコクコクと二回頷いた。
「高成に行くなって言われただろ?」
止められた、というか禁止令って感じ?
“絶対一人で行くな!”て散々言われた。
行かん、て約束したけど、それは一人で行く時の話で今日は圭ちゃんもおるし一人じゃない。だから、ここに寄った。
「言われたけど、一人じゃないから」
そう言うと店長は甘いな、と笑った。
「で、その友達は?」
「この辺りのショップで買い物してる、と思う」
「放ってきたのか?」
「いや、友達から消えた」
自由だな、と言うとコーヒーに口づけた。
以前の店長には見えんかった大人の色気ってヤツが仕草のひとつひとつにちらほら顔を覗かせる。
どっちかと言えば近寄りたくなかった雰囲気が一変して近寄り難い雰囲気になってる。
本来、持ち合わせてた“大人の男”という甘い空気があたしを魅了してドキドキする。
話すのも久しぶり。
会いに行くのは初めて。
何しに行くん?って聞かれたら特に用事も無いし、そこで欲しいものがあるわけでもない。
でも、何の前触れもなく思い出したこととか、あの日の言葉とか、行こうかなと思ったこととか全部ひっくるめて勝手に足が動いてた。
「で、どこ行くん?」
「ん~、ちょっと」
どこって言われても…まぁ言えばいい話なんやけど、別にそこじゃなくても買えるわけで、なんでわざわざここ?て言われたら引き返さんとあかん気がしたから少し濁した。
この辺り初めて!と騒ぐ圭ちゃんは左右に並んだショップを行ったり来たりして、あまりにも見たそうやったから、「あたし、この一番端のショップにおるから」と言うと、わかった!と顔も見ずに消えた。
一番端のショップ。
通るのは2度目。
来るのも2度目。
でも一人で来たのは初めて。
昨日の電話で念を押されたことを思い出したけど、せっかく来たし、と躊躇した手をドアにかけて店内に入った。
店内は相変わらず外装からは想像できんくらい広くて、BGMにはジャズが流れてた。
真っ正面にはレジがあって、そこにおるはずの人がおらん。
店からっぽにして奥に行ってんの?と余計なお世話が働いて真っ直ぐレジの方に歩いていくと突然左腕を勢いよく引かれた。
「……?!」
驚くあまり声も出んくて、その正体を確認すると、
「久しぶり」
前回とは雰囲気が全く違う店長がおった。
初めて会った時は無愛想で無精髭が生えてて一言で言えばモサイ感じやったのに、今は髪も短くすっきりして無精髭も無くて黒ぶち眼鏡で若く見えた。
「・・・店長?」
思わず確認してしまうほどの変わりっぷりに店長は笑って、「そうだよ」と言った。
「そろそろ来る頃だと思ってた」
そう言うと店長はあたしを残して奥に入り、数分後にはあの日と同じようにコーヒーを2つ持ってきた。
今日はすでに椅子が置かれてて座るよう目で促されて荷物を足元に置いてから腰掛けた。
ありがとうございます、とコーヒーを一口飲むと目があった。
なんていうか、引き付けられるっていうか、目力がすごい。
その視線に捕まっただけで身動き出来んくなるって感じ。
まさか目が合うとは思わんかったあたしはなんで?て思いながらも、いつそらしてくれるんか考えてたらスッと視線が緩まった。
「で、何しに来た?」
緩まったと思ったら一番辛い質問が飛んできた。
ここに来た理由なんか当然ない。
急に店長の顔とあの別れ際に言うた言葉を思い出したら勝手に足が動いてた。
CDを買う予定もオススメを聞きにきたわけでもない。
今更やけど、なんで来たんやろう?て自分でも思う。
「まさかアレ本気にした?」
店長の言うアレはあの時の言葉の事やと思ったあたしはコクコクと二回頷いた。
「高成に行くなって言われただろ?」
止められた、というか禁止令って感じ?
“絶対一人で行くな!”て散々言われた。
行かん、て約束したけど、それは一人で行く時の話で今日は圭ちゃんもおるし一人じゃない。だから、ここに寄った。
「言われたけど、一人じゃないから」
そう言うと店長は甘いな、と笑った。
「で、その友達は?」
「この辺りのショップで買い物してる、と思う」
「放ってきたのか?」
「いや、友達から消えた」
自由だな、と言うとコーヒーに口づけた。
以前の店長には見えんかった大人の色気ってヤツが仕草のひとつひとつにちらほら顔を覗かせる。
どっちかと言えば近寄りたくなかった雰囲気が一変して近寄り難い雰囲気になってる。
本来、持ち合わせてた“大人の男”という甘い空気があたしを魅了してドキドキする。