夢物語【完】



「そうや!世津、この前の話を杏ちゃんに教えてあげてよ」

逃げ道がなくなったあたしは面倒事を押し付けるように世津に声を掛けた。
急に振られてびっくりしてたけど、前々から話してたことやったから頷いてくれた。

すると空気を読んだんか自分の飲み物を持って席を立った中塚さんはリビングのソファー組の方へ混ざった。

世津がカウンセラーの仕事を数年前からし始めたこともあって、機会があれば話を聞いてあげてほしいって言うてたところでちょうどよかった。
世津の両サイドが空いたからそこに二人を座らせて話を始める。

「僕たちってどこにも当てはまらないね」

悟さんがなっちゃんに言うと「あたしは酒があればいいよ」と答えた。

「櫻はなっちゃん好きだけど…」

そう言ってちょこんと現れた櫻はなっちゃんの隣に座って恥ずかしそうに言う。
なっちゃんは元々服を作るのが趣味で櫻にはよく作って渡してるらしい。
紗生にも作ってくれてて今着てるクリスマスのコスもなっちゃんお手製のもの。

「サクは可愛いねー!!うちの娘になりなよ!凪でも和でも好きな方を選ばせてあげるよ!!」
「じゃあ、なーくんがいいー」
「和がいいの?!おっとりしてる方がいいのね。いいよ、いいよ、あげるあげる!」

そんな会話をしながらそれぞれ楽しそうに過ごしてる。
毎年の光景やけど、ほんまに不思議な光景で自分が想像してた未来予想図とはかけ離れてるけど、こんな日が過ごせるようになるなんて思わんかった。

「サラダとフルーツと出したよー!食べる人は食べてよー」

誰も聞いてないやろうけど、一応言うてたらその内取りに来る。
それもいつものパターンで、サラダとフルーツなのもいつもの品。
席に座って落ち着くと「ありがとね」と悟さんが声をかけてくれた。

「それにしても、やっぱりみんながおる方が楽しいですね」
「ほんとだね。みんな出掛けてXmasを過ごしてもいい年齢なんだけど家で過ごしてくれるから嬉しいよねえ」
「凪くんはまさにそうですもんね。彼氏とか彼女出来たら来てくれんくなると思えば寂しいですね」

今はこうして家族で楽しめてもいつかは自分達が家を出て過ごしたように子供も傍を離れていく。
そして、将来家庭を持つようになれば違う景色に変わる。

それがすこし寂しいと感じるのはあたしが子離れ出来てないからなんやろうか。

「これからは大人の時間でしょ。俺たちは昔から変わらず死ぬまできっとこうして集まってお酒飲んでワイワイすると思うよ。毎日一緒にいるのも飽きずにね」

悟さんが笑うからそうかもしれんと一緒に笑った。