「ただいまーって、やっぱりか」
時間は9時5分。
一番乗りで帰ってきたのは我が息子 千秋と凪くんやった。
やっぱりか、というのはきっとテーブルに並んだ空の缶と瓶、そして広げられたスナック菓子とお酒にのまれた母親であるなっちゃんを見て、出た言葉やと思う。
「あーら、可愛い長男のお帰りじゃーん。ママにハグは?」
なっちゃんが凪くんに絡むけど、呆れてるのか教育されてるのか何も言わず嫌な顔せず迷うことなくなっちゃんの元へ向かいハグをした。
なっちゃんが納得というか解放するまでハグすると黙って何も言わずに離れた。
「千秋」
それを見てたのかどうかはわからないけど、名前を呼ばれた千秋は驚いたようになっちゃんを見て、なっちゃんの手招きを見て、諦めたように手招きされるがまま近づくと自らなっちゃんにハグをした。
それを見た周りの大人は苦笑してた。
「なっちゃん酒臭いよ」
「うるさいよ。なんなら千秋も飲めば」
なっちゃんの言葉にあたしと高成を見た千秋は溜息吐いて「いらない」と断った。
飲むのかと思ってたから少し意外だったけど、我が子ながらちょっと感心した。
続いて入ってきた紗生たちに「おかえりー」と言ってると、後ろから誰かに抱きしめられ、前に伸びてきた両手が組まれ頭の上に顎が乗った。
「…凪くん?」
「せいかーい。涼ちゃんにも、ただいまのハグー」
そう言ってギュッとハグしてくれた。
こうしてハグするのは久しぶりで数年前に戻った感じがしてちょっと嬉しい。
うちの子供を含め、みんなハグすることが挨拶になってるような所がある。
小さい頃はそれが普通だったけど、今はもうみんな大きくなったしそういうのもなくなった。
「おいコラ!涼に触んな」
「いいじゃーん、ハグくらいー」
「ハグどうこうのじゃなくて触んなっつってんの!」
高成が凪くんの肩にグーパンして大人気ない言葉を言うけど、あたしはその場所をさするようにフォローする。
「凪くんごめんな?そうや、飲み物と食べ物用意するしちょっと離れてー」
そう言うと離れた凪くんを確認して席を立った。
そしてテーブルから離れるとあたしと向かい合う形になった凪くんが真正面から抱きしめてくれた。
「涼ちゃん可愛いねー」
「凪くんは大きくなったねー」
互いにギューッと抱きしめて笑い合う。
久しぶりに会うから本当に男の子から男の人になっちゃって、しかも雰囲気も性格も悟さんに似て空気が柔らかい。



