ソファーから立ち上がったパパはキッチンで動き回るママに近づく。
階段に背を向けた形になるから少しだけ顔を出して、それを見てた。

「涼は?子供に改めて言われた感想は?」

パパはママの傍に立ち、邪魔にならないところでずっとママを見てる。
その間もママは動き回って一切パパを見ようとしない。

やっぱりママはパパのことが好きじゃないのかもしれない…という不安がよぎる。
不安でドキドキして見たくなくて目をつぶると「ちゃんと見てろ」とちーにいに言われて無理やり見させられる。

「んー、まぁ陽夏ちゃんと比べられるとあぁなるよね。世津のところは店長が世津の為に連絡するやん」
「で、俺はしないと」
「うん」
「電話してこないじゃん」
「電話して出たことないやん」

今日は奇跡やん、と笑うママに苦笑するパパ。
どうなってんの、うちの両親は!と本当嫌になる。

「たまには電話欲しいんだけど」
「じゃあ絶対電話とるって約束してよ」
「・・・とるよ」
「なによ、その間」
「折り返し電話する、にしてよ」
「“絶対とる”って言って」
「・・・」
 
無言になるパパ。
そんなパパを見て、くすくす笑うママは手を止めてパパの方を見た。

「紗生のため?それとも、あたしのため?」

ママが手を止めたのが合図かのようにパパはママの腰に手を置き、くっついた。

「紗生がパパ大好きなのは見てわかるし、連絡取りたがるのわかってる。なんであたしが紗生に携帯持たさへんかわかる?あたしですら電話でぇへんのに紗生が電話してでぇへんかったら可哀想やろう?だからあたしが嫌われ役を買って出てるのに」

そうだったんだ…とママを責めたことをちょっとだけ後悔する。

「嫌われてんの?」
「今日も怒ってたで?」
「そうなんだ。俺は見てないからわかんないわ」

そう言ってママを引き寄せキスをする。
見てるあたしの顔が真っ赤になっちゃうほどのパパとママのキスシーン。
それも1回じゃなくて何度も何度もしてママがストップかけるまで続いた。

「なんだよ」
「あたし、夕飯作ってるんですけど」
「涼は俺がいなくても寂しくないわけ?」
「・・・そんなことないけど」
「なんだよ、今の間」

そしてパパがママに小さな声でコソコソと何かを話す。
それを聞いたママが目を見開くからパパが笑いながらママの頭を撫でる。

「これでいいんだよ。千秋んときもそうしただろ」
「年齢が違うんよ!恥ずかしいわ!!」

真っ赤になるママ。
そんなママを愛おしそうに抱きしめるパパ。
真っ赤になるあたしに、普通の顔して見てるちーにい。

「な、言ったろ。俺らにはわからない夫婦間でなにかあるって。祐介さん曰く、うちの家が一番らしいから」
「…なにが一番なの?」
「夫婦仲良いの」

何も答えられなくて黙ったままでいると急に立ち上がったちーにい。
足音も気にせず二階の自分の部屋に戻ってしまった。