あたし達は特別な家庭に生まれて、特別な両親がいる。

パパの仕事は不定期でいつ帰ってくるのかわからない。
ママはそれを一切気にしない。

京平くんだって陽夏ちゃんに連絡いれるのに、あたしのパパとママだけ何も話し合わない。
そんなことが不安で不安でいつも心配になる。

ちーにいは“俺ら子供にはわからないことだってあるだろ”って何も気にしていなかったけど、あたしはそうは思えなかった。

「紗生、パパなんて?」
「今日帰ってくるって」
「ふーん。慧ちゃん、京平は?」
「パパも同じこと言ってた」

パパが帰ってくるって伝えたのに、今だってママは「ふーん」って言っただけ。

「じゃあ、ぼちぼち帰らなきゃねー」
「帰って夕飯の支度するわ」
「これで一旦落ち着けばいいのにね」
「今日の機嫌次第で色々聞いてみるわ」

そんなやりとりをせっちゃんと交わして、あたし達はせっちゃんのおうちを出る。

車に乗り込んでエンジンをかけるとパパの声が流れる。
ママが大好きな昔のアルバム。
それをパパは「恥ずかしいからやめれ」と言ってる。

そういうのを見ると昔から互いに好きだったんだなとわかる。
でも慧ちゃんや櫻のパパとママを見ていたら、うちのパパとママは互いに無関心すぎて憧れを持つことはできない。

涼介くんがいたって結婚したのはパパとママ。
他の家みたいに“夫婦”だっていうところを見れるだけでいいのに、そんな空気がない。

一人考え込んでいると、あっという間に慧ちゃんの家の前。
ママは慧ちゃんを下ろして、運転席から降りて陽夏ちゃんと会話してる。
楽しそうにニコニコしながら話してる。
陽夏ちゃんに「今日は京平帰ってくるって」と伝えると陽夏ちゃんは嬉しそうに笑う。

あたし達のパパは一般家庭とは違う職に就いてるからお休みも不定期で帰ってくる時間もまちまちで、久しぶりに旦那さんが帰ってくるとなれば奥さんが喜ぶのは普通で、陽夏ちゃんが嬉しそうに笑うのが普通だと思った。

でもママは違う。
パパが家にいようがいまいが関係ない。
パパがいれば一緒に出かけたりするけど、帰ってくるからといって陽夏ちゃんみたいに嬉しそうにしない。

いないと涼介くんのことばかりで、どっちが旦那さんなのかわからない。

「ごめんなー、帰ろか」

車に乗り込んだママはやっぱりいつものママ。
家に着くと何も言わず家に入るあたしの事だっていつも通りだって思ってる。

そんなママにイライラして二階の自分の部屋に入ってベッドに飛び込みうつ伏せになってた。