最初からわかってた。
だいたいあたしと付き合った事がおかしかった。
だって、こんな平凡なあたしが芸能人の奥さんなんかになれるはずがなかったんやから。

実際、その芸能人と結婚して息子までいてるけど?!
嫁姑問題もなく仲良くしてくれてるし、近くには陽夏ちゃんもおって涼介もいてくれる。

すごい幸せな環境で恵まれてると思う。
てか、恵まれてる。

そんな恵まれてる環境の中で、やっぱりあかんかったんやなって思うのは自分自身のこと。

結婚して数年経った今も自分に自信持たれへんし、満足させてあげれてる自信ない。
疲れて帰ってきても、いつの間にか寝てしまってるあたしをベッドに連れていってくれるし、休みだってあたしの気分転換にって行きたいところに連れていってくれるし金銭面で苦労したことだって一度もない。

あたしは常に満たされてるけど、あたしが癒してあげられてるかどうかって言われたら、その自信はなかった。


―――そして数時間前、その不安が全部現実となって現れたと思った。

やっぱりあたしには無理やったんやな、と現実を突きつけられて自分の不甲斐なさが嫌になったし悲しかった。

何回も何回も確認して一緒になったのはあたし達自身の決めたことやけど、やっぱりあかんかったらしい。
昔も今も、あたしは高成を支えてあげることも釣り合うこともなかった。

「千秋~、買い物行こか?」
「いくぅ~!」

2時間前に大阪の実家に帰ってきたあたしはリビングで携帯を横目でチラ見しながらテレビを見てる。
そのあたしをよそにお母さんは千秋を連れて買い物に出掛けようとする。

「いらんもん買わんといてや」
「久しぶりに帰ってきた孫にモノ買わんで何するねん。あんたもダラダラしてんと帰り」
「千秋どうすんのよ」
「置いてったらええがな」

シラッと言い切るお母さんは千秋に「夫婦喧嘩に付き合わされる子供の気になってほしいもんやねぇ」と言いながら出かけていった。

「子供置いて帰る親がどこにおんねん」

誰もおらんくなったリビングでボソリと呟くと携帯片手に体を倒した。

ちょうど忙しいお正月も終えて、数年間の休みない育児と家事に疲れてた頃やった。
だからちょうどいいって言うのは違うけど、疲れてたせいで判断が鈍ったんかもしれんと思えた。

リビングで寝てたのもあって、ちょっと体がだるくて熱っぽいような気もする。
ちょっと休んで体調も戻して冷静になればまた変わる、そう思って目を閉じた。