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「まだ怒ってんの?」

ベッドの中、あたしは高成に背を向けて寝ている。
背後からは抱きしめるように高成があたしを包んでるけど、ベッドに入ってから一切顔を見てない。

あれから、久々やってわかってんのにあたしを限界まで追い詰めた挙句、風呂でゆっくりしたいって言うたのにも関わらず勝手に入ってきてはまたあたしを抱いて、あがるどころかのぼせたあたしを心配することなく笑いながらベッドに連れてきて今に至るわけやけど。

「涼が予想以上に俺の名前を呼ぶから変に、」
「その説明はもういい!!」

なんでもあたしの機嫌を直そうとすれば、あたしのせいにした言い訳ばっかりして反省の色も無い。

誰のせいでこんなんなってると思ってんの?!と言うたところで反省するわけもなく、お前は盛りのついた高校生か!と言ってやりたい。
これやからブラックになる高成は好きじゃない。

「涼、こっち向いて」
「・・・」
「悪かったと思ってる。でも俺だって久々で興奮、」
「それはいいから!!」
「とにかく、そっち向いてたら謝るも謝れないだろ」

あたしがどっち見てようが謝罪は出来るでしょうが、と言いたかったけど、これはあたし達が大切にしている約束の一つだから言えん。

“小さいことでも大きなことでも喧嘩したあと謝るときは向かい合って、お互いの目を見て謝ること”

それが約束の一つにある。
その約束を破るわけにはいかんから、痛む腰を気にしながらゆっくりと高成と向かい合った。
もうええっちゅう会話を遮って素直な気持ちを口にした。

このキャラを他の人が知ったら一体どんな反応するんやろうっていつも思う。
いつもは爽やかな顔して優しいパパを演じてるけど、皮を脱げば自分の欲望に忠実すぎる人間に変わる。

恥ずかしげもなくサラリと言いのける素直な口とあたしを知り尽くしているという自慢げな顔。
こんな高成を見て今まで通りでいれる人なんかおらんと思う。

「でも知ってるのは涼だけだけど」
「あたし以外におったら、あたしどうしたらええの」

それを悪びれることなく言うあたり、ちゃんと自覚してるし、そんな自分を楽しんでる。
そんな姿を知ってもそんな姿を見せるのは“あたしだけ”やっていう事実があるからこそで、

「いないから安心して」

それが真実じゃなければ、一体どうしたらええんか本気で考える。

「俺はずっと変わらず涼を愛してる」
「うん」
「うん、てなんだよ。涼は?」
「あたしも同じ気持ち」
「…ちゃんと言葉にして」

それでも、こうして今だけじゃなく、しょっちゅうあたしの気持ちを確かめようとするところとか、誤魔化しの言葉を受け入れんところとかを見ると、すごく愛されてるんやな、と思ってしまう。
そう思ってしまうところが高成に毒されてるんやろうと思う。

「あたしも愛してる」

真っ直ぐに高成を見つめ、両頬に触れて小さくキスをした。
そんなあたしに高成は嬉しそうに笑う。

「子作りしとく?」
「今はいい!!」

きっとこれからもあたし達は幸せに包まれてく―――と思う。





END