どこに行っても余韻を味わうことの出来ん完全に高成のペースで来てる今日。

時間的にもホテルなんやろうけど、さっき「目つぶれ」って言われて景色を全く見せてもらえてない。
かれこれ20分くらいは走ってるけど、どこに向かってるんか全くわからん。

「じゃ、降りて」
「は?!」

どこかに停まったかと思えば高成が助手席のドアを開けて、目をつぶったままのあたしを誘導する。

「目って開けたら、」
「ダメに決まってるだろ」

何も見えん怖さに思わず聞いてみても当然のように却下される。

「ここに座ってて」とロビーらしき場所に座らされ、数分で戻ってきた高成にまた手を引かれて次はエレベーターに乗り込む。

この状況が非常に恥ずかしいんやけど?!と思いながらも素直に目をつぶってるあたしも完全に楽しんでるなって思う。

周りから見たら、そりゃ変な光景に違いないし、そんな自分を見られてることが恥ずかしい。
ビビッてへっぴり腰になってるカッコ悪い姿を見せんように高成の誘導を信じてスタスタ歩いてるようには見せてる。
...かなり怖いけど。

カチャリ、とドアの開く音がして真っ直ぐ進むよう促される。
そして部屋の端くらいまで歩くと壁をつたってた手が更に冷たい壁に当たった。

「なに?!」
「窓だから。目、開けていいよ」

高成の言葉にゆっくりと目を開ける。
数回瞬きをして目に入ったのは―――

「・・・」

―――言葉にならん景色やった。

数年前からずっと叶えばいいと思ってて、こんな場所でクリスマスを過ごせたらって思ってた。

「どう?サプライズ」

高成の嬉しそうな声に思わず振り返って高成を抱きしめた。

「超嬉しい!ありがとう!!」

感謝の気持ちを全身で伝えるべく思いっきり抱きしめると高成も抱きしめ返してくれる。
手を緩めるとあたしを反転させて景色が見えるように背後から抱きしめた。

「こんなので良かったのか?」
「良すぎるよ!夢の国じゃないって言うたのに!!」

目の前に広がるのは行く前に希望していた夢の国の夜景が広がっていた。
そして、さっき見たけど部屋はスイートルーム。
あたしには勿体ないくらいのクリスマスプレゼント。

「夢の国じゃないって言うたのに」
「遊びに行くわけじゃないし」

そうやけども!と思いながらも腰に添えられている手に自分の手を重ねて夜景を見てた。

キラキラ光る建物にライトを持った人たちが歩くたびに移動する光。
ちょうど始まったパレードも下から見るのと上から見るのとではまた景色が違う。

「これだったら千秋も連れてくればよかった」
「それなら二人だけにならないだろ」

それもそうか、と納得したあたしは景色を背後にして高成と向かい合った。

「あたしがここに泊まりたいって思ってたの、なんでわかった?」
「知らないよ」
「嘘ばっかり。陽夏ちゃんに聞いた?」
「まさか」

あたしの問いかけに面白そうに笑う高成。
あたし本気で聞いてるんやけど?と思いながらも流出元を探る。

あたしがここに泊まりたいって言うたのは陽夏ちゃんと涼介だけ。
涼介が言うはずないから陽夏ちゃんが高成に言うたってのが一番アリそうな話なんやけど、高成の反応からして違うみたい。
でも他に言う人なんかおらんし。

もしかしたらCMが流れたときに言うたのが聞こえてたんかもしれへん、そう思ってから、もう一つの情報源に気が付いた。