「お、涼介来たのか。お疲れ」

裏から戻ってきた高成が庭にバーベキューコンロを置いて、悟と京平に設置を任せて中に入ってきた。

「おぉ。そういやシオが明日10時入りで、て言うてたで」
「10時ね、ありがとう。あ、千秋落とすなよ」

マネジャーのシオからの伝言を伝えると軽く返事をしたナリは俺の腕の中におる我が子の頭を軽く撫でて、キッチンに立つ涼の隣に立ち、腰に手を回した。

それにびっくりした涼は飛び上がってたけど、邪魔やと言うことなく数分間ひっついたまま動いてた。
動きにくそうやな、と思いながらも自由に動いてるあたり、日常茶飯事なんやろう。

ナリは千秋が産まれたことで二人の時間が減って不満がってたから俺が千秋を見てるのが好都合なんやろう。
俺が千秋を見てたら自分は涼の傍でおれるっていうヤツ。

難儀なポジションに就いてもた、と何回目かわからんほど思ったけど、これで二人のいちゃついてる所を見んくて済むと思ったら、千秋がさらに可愛く思え、天使にまで見えてきた。

「涼介、手伝え」
「涼介はダメ。千秋抱いてるから」
「なら、お前が手伝え!」

京平が中におる俺に向かっての言葉にナリが答える。

どうやら涼との時間を邪魔されたくないらしい。
でもこうなると涼が動き始めるのは想定内やったらしく、がっちり掴んでた。
それを見た俺は溜息が出た。

いつまで経ってもコイツらは変わらん。
遠恋効果なんか結婚してからは常に一緒におるし気持ちが冷めたようなこともなさそう。
しいて言うなら、涼が千秋を構うからナリを構う時間が減って、ナリの束縛がさらに強まったっていうことくらい。

そうやってコイツらはバランスを取ってんやろうけど、俺からしたら腕の中で眠るコイツらの子供の今後の苦労が目に見えて気の毒に思える。

それでも、あと数年して杏みたいに話し始めたら、おかんはこうでおとんはこうや、ってありとあらゆる情報が俺の元へ舞い込んでくるんやろう。

それもそれで楽しそうや。
俺はちょっと痛くなった腕を少し移動させて頭を移動させると体を支えてた左手で千秋の頭を撫でながら“早く大きなって、おかんとおとんをおちょくって遊ぼな”と心の中で伝えた。




END



Mr.Rの妄想世界