「あけましておめでとう、高成」
開いたドアから顔を出した高成は唖然して、一瞬止まった。
そして、戻ってくるとハッとして眉間にシワを寄せた。
グッとドアを押して、中に入るよう促す。
パチンと携帯を閉じると、あたしの持ってた携帯からは切断音が流れる。
後ろの3人は何も遠慮することなく部屋に入ってく。
あたし、初めてなんやけど?と思う時間すら与えられず、あっという間に玄関に一人残された。
一人で住むには広すぎる部屋。
部屋がいくつもあって、壁には高成が好きなアーティストの写真が飾られてる。
高成の生活してる場所。
部屋中が高成の匂いに包まれてる。
置かれてるインテリアから小物まで全部が高成の好きなものばっかり。
高成本人じゃないのに何故かドキドキする。
「いつまでそこにいる気なの?」
ふて腐れた、というか、呆れたような声でリビングに続くドアにもたれて腕を組んで立ってる。
私服なんやけど、いつもよりラフで髪もセットしてんくて着飾ってないとこが自然体で、いつもと違う高成にドキドキする。
「早く入れば」
素っ気ない言い方。
嘘付いて騙してここまで来たあたしが悪いけど、冷たい言い方にずきんとする。
それを察知されんように俯き、「お邪魔します」と呟いた。
みんながおるリビングに行くには高成の傍まで行かんとあかん。
でも、高成はさっきから一歩もそのドアから動こうとはせん。
あと3歩進めばドアノブに、というとこで高成に腕を掴まれる。
「へっ?!」
焦って変な声だしたあたしを無視して、リビングと反対側の部屋に入れられ、鍵もかけられた。
「高成?」
そのまま壁にもたれたままで、あたしを抱きしめる高成。
耳元ではっきり聞こえた溜息。
やっぱり怒ってる。
迷惑やったんかもしれん。
びっくりさせようと思って考えたのに迷惑かけてしまった。
高成の胸を軽く押すと、さらに強く抱きしめられる。
「離れて、どこ行くつもり?」
声色がどうしても怒ってるようにしか思えんくて、でもそんなこと言われたら離れるにも離れられんくて、
「それとも逃げようとしてんの?」
抱きしめてくれる腕が強くなる。
高成が怒ってることがどうでもよくなって、久しぶりに感じる温もりが嬉しくて、頭を肩に預けた。
持ってた鞄も足元に落として、背中に手を回す。
擦りつくように、あたしからも高成を抱きしめる。
そうすると高成の腕の力が緩んで、いつもみたいに腰の辺りで両手を組んで軽く引き寄せられた。
「来るなら来るって言えよ」
「それやったらサプライズにならんやん」
溜息混じりに吐いた言葉に感じとれたのは安心感。
居場所が特定出来なかったから心配した、って言われた時は胸が痛くなった。
「今まで何してた?」
「陽夏ちゃんちでおった」
「ずっと?」
「うん、日にち変わってるから...一昨日から」
一昨日!?とびっくりしたのも無理はない。
「京平がうち泊まったのって」
「あたしが来たから、みたいな…?」
なんだよ...とうなだれる高成は、ようやく腑に落ちたみたいで長い息を吐いた。



