何度も何度も考えてしまうこと。

それはただひとつ。



あのとき、あたしが高成をひとりの男として見ていたら。
高成があたしを女として好きだと言ってくれたら。

今頃、忙しい合間をぬって会い、あの夜のように手を繋いで隣を歩けただろうか。

そんなことばかり考えてしまう。だけどやっぱり、高成の存在は大きすぎる。


ファンとして優越感で寂しく感じたのか、それとも、本当に高成のことを想っていたのか、その答えを見つけ出すにはお互い時間が足りなかった。

どうにもならないことはたくさんある。これもその一つだっただけ。


ライブDVDを見ているだけで、ドキドキしてた。
次のライブが待ち遠しくて、ワクワクして、チケットが取れたら、公演日が待ち遠しかった。
生で高成を見れるだけで嬉しかった。

“目があった”という錯覚を起こすたびに幸せになれた。



それだけで幸せだった。
それだけで夢を見続けることが出来た。

今回は少し特殊で、偶然にあの夢のような一夜が過ぎて、元に戻っただけ。


今のあたしと、高成と出会ってからのあたしでは、少しも違わない。何も変わったところはない。



変わる必要もない。