俺はコイツが嫌いや。
やっぱり嫌いや。
だからってどうこう言うつもりないけど、その上から目線をなんとかしたらどうやねん。

そんなこと口に出して拗れたらめんどくさいし言わんけど、ほんま出会った頃から態度のデカさは一切変らん。
年功序列って言葉を知らんねや。

「何もないってわかっとったら聞くことでもないやろ」

ほら、黙った。
結局は自分に内緒で二人っきりになるなって嫉妬してんねやろ?
俺と涼が仲良くするのが気に食わんだけ。

男女の関係っちゅうんは嫉妬や駆け引きやなんやらで大変や。
ま、俺と涼には存在せんことやけど。

「別に疚しいことなんかないやん。お前が一番よぉわかってるやろ」

なんでこんな事に俺が巻き込まれなあかんねん。
二人の話やろうし、俺全く関係あらへんやん。

溜息吐いてナリの顔を見ると、なんでか思いっきり睨まれとって意味わからん。
俺、なんか変なこと言うたっけ?

「あ、ナリ!涼ちゃんが呼んでるよ」

蛇に睨まれた蛙状態やった俺は悟の一声で救われる。

コイツは一切俺の顔を見ることなく涼の元へ戻る。
スタジオの入り口から顔を出した涼がナリに笑いかける。
そして、俺にも気付いて手を振った。
振り返そうとすると、ナリが涼の肩を押して無理矢理押し込んでいった。

子供か、って呆れそうになる。
アレに付き合うってなったら涼も苦労すんなー、とポケットからタバコを取り出し、窓の外に目をやる。

「まるで恋敵だよねー」

一本もらっていい?とタバコを受け取り、同じように窓の外を眺める。
今日は晴天で雲ひとつなく、風が気持ちいい。

「理由は聞いた?」
「今、聞いた」

俺も家族で涼ちゃんに会ってるって言ったら怒られそうだなー、と苦笑する。

悟もナリに内緒で涼と会ってるみたいで、それはナリには報告してないらしい。
以前、家族で会いに行ったとか。

「涼ちゃんはナリのモノで、そうじゃないんだけどね」

独り占めいたいんだよねー、と笑う。

独占欲の強さは生半可なものじゃないことくらい俺だってわかる。
悟がそう言って笑うのは自分がそうだかららしい。
見た目によらんとは悟にも言えるらしい。

「離れてるとよけいに不安なんだろうね。ナリに覚悟はあるみたいなんだけど、それまでの間に寄ってくる害虫は遠距離だと駆除できないから」
「害虫駆除って…」

俺もその害虫かい、と思ったけど、悟は見透かしたように「涼介はまた別だよ?」と笑った。

「あんまり仲が良いから嫉妬しちゃったんじゃないかな。やっぱり彼女には涼介よりも先に会ってほしいだろうから」

二人で会うことがどうのこうのって話じゃないと思うよ、そう言った。

さすが義兄だけあってよくわかってる。
いや、普段から薺と一緒にからかってるだけなんやろう。

京平もナリも独占欲の強い男で女は大変や。
気の毒にも思える。