時の歌姫

かなり強く揺さぶったつもりなのに、何の反応もない。

無視されてるみたいな悲しい気持ちがあたしを卑屈にさせる。


誰かの歌声がこんなにヤス兄を夢中にさせている。

あたしじゃなくて、彼女の歌声が。


悔しくて。

悲し過ぎて。


思わず睨み付けた。

ステージの上の彼女を。


玉座の姫に届くわけないってわかりながらも。


でも違ってた。

初めてまともに見たシルクはあたしが想像もしない表情を浮かべていた。


困惑の表情。

その小さな口から溢れるように歌声を響かせながら。

その瞳はあたしを真っ直ぐ見てる。

助けてって。

彼女の目は間違いなくあたしに助けを求めていた。