時の歌姫

切ないギターの旋律が、会場のざわめきを消して行く。


視界を失わせた虹色のライトが落ちると、

彼女のシルエットが現れた。


いつの間にか、声がギターの音色と絡み合い、

ステージは静かに始まっていた。


あたしの心のもやもやは消えないけど

心とは裏腹に体は音の波に飲み込まれ始める。


彼女の繊細な、それでいてぶれない芯のある歌声だけが小さなライブハウスに響いていた。

観客は息をひそめるようにして耳を傾けている。


こんな静かなライブは始めてだ。