時の歌姫

「宍戸さん、こいつがさっき話してたやつ。若いけど仕事はできるから」


薄くスモークを貼ったサングラスをかけた宍戸が鷹揚にヤス兄へと視線を向ける。

あたしは不自然にならないギリギリくらいに顔を伏せていたけど。


「君がシルクの担当か。繊細な子だからよろしくな」

いかつい外見からは想像つかない優しい声と言葉が響いて。

はっと顔を上げた。


瞬間的に向けられた宍戸の視線はすぐに通り過ぎて行く。


「はい。精一杯彼女の気持ちに添えるよう頑張ります」

真摯なヤス兄のセリフに、満足気にうなずく宍戸。


結婚の挨拶じゃないんだから、

と冷めてるのはあたしだけだ。

透明人間になった気分だった。