時の歌姫

なんだかんだ言って二年以上働いてるビルだから、


「ミチル、何走ってんの?」

「転ぶなよ!」


制服で走ってると声かけられまくりで恥ずかしい。


それもこれもあいつのせいだ!

恨み言の一つでも言ってやる、と下を向いてひたすら走ったけど、


見覚えのある背中は見つからないまま、出口まで来てしまった。

どんだけ早足なんだよ。

それともトイレにでも行ったんだろうか。


だめ元な気分で外へ出てみる。

目の前に広がるのは昨日の広場。

強い風が吹き寄せた。