時の歌姫

「どうぞ」

この店自慢のブルーマウンテンをことさら丁寧に引いて。

彼の雰囲気に合いそうな、シンプルでいて少し武骨なマグカップ。


カップを置いた後はできるだけ寛げるよう、一人にしてあげよう。


なんて思ってみても。


無理過ぎる!!


まったく他にお客さんが来る気配もない狭い店の中で、

5メートルも離れていない彼とあたし。


彼も英二さんみたいに器用じゃないんだろう。

よっぽど気まずいのか、あっついコーヒーを必死のスピードで飲んでいる。