時の歌姫

「お待たせしました。何かご注文されますか?」

せめてものフォローにと、満面の笑顔で聞いたのに。

「じゃ、コーヒー」

こっちを見もせずに無表情な彼。


もしかしてやな奴?

お礼ぐらい言おうと思ったけど、これじゃあ言いだせないや。


「ごゆっくりどうぞ」


今度は単なる営業スマイル。

戻ろうとした時、

「あ、俺行かなきゃ。これ二人分ね」

英二さんが立ち上がって千円札を出した。