もともと警戒態勢だったせいか、

すぐにサイレンが鳴り響く。


人々が右往左往しているのは見えたけど、さすがにお目当ての人まではわからない。


あたしは、いても立ってもいられなくなって、非常階段の方へきびすを返した。


「ヤス兄! 無事でいて……」

祈るような気持ちで駆け下りながら、どこか不気味な予感に襲われていた。


今になって思う。

あの時、あたしはどこに向かって走っていたんだろう?


大きな運命が口を開けて待っている渦の中へ飛び込むなんて。


人は誰でも気づきようがない。


ましてや、世界が変わってしまうなんて、



いったい誰が気づく?