時の歌姫

ヤス兄にも誰にも言ってなかったけど。


実は今回のオーディション、あたしは奇跡的に最終審査まで残っていた。


しかも、そのオーディションは、グランプリに選ばれたら大手レコード会社のバックアップでデビューが保証されているという、

今まで受けてきた数多のオーディションとは格が違うものだったのだ。


とうとう努力が報われる時が来た!

あたしの気合いは相当の物だった。


「あの、すみません。こんにちはー?」

オーディション会場に着いたあたしは、あまりの人気のなさに驚いた。