「ミチル。何食いたい?」

「うーん。お好み焼きかなあ。あ、でもかどやのナポリタンもいいしなあ」


ギラギラ光るネオンの街を後にして、あたしたちはビルの谷間に向かう。


お洒落なビルに入っている、店構えだけお洒落で味は薄っぺらのレストランは、地元民のあたしたち向けじゃない。

この街で、ごはんは馴染みの店に限る。


本当はいつか、もっと、本当にお洒落な、銀座とか表参道、とかまで繰り出して、

ヤス兄と本物のデートもしてみたい。


いつか、あたしがヤス兄の彼女になれたら。


「お好み焼きいいな。あそこのふくふく丸いニャンコにも会いたいしな」

ヤス兄は丸くてふわふわの物に目がないのだ。