能力者の出現により、みるみる世の中は物騒になった。


初めは暴力的な能力を犯罪に使う能力者が増えて。

そのうち、逆に能力者は差別されているとか何とか。


対立と暴走。

あたしとヤス兄が住んでいるこの繁華街の街は、もともと平和な街じゃなかったけど、さらに治安が悪くなった。


あの音楽は、新貝コーポレーションが責任持って管理しているとかで、あれ以来能力者が増えることはなかたけれど。

能力者と非能力者の溝は深まるばかりだ。


「ミチルちゃん、今日はもう上がっていいよ」

ぼんやりとグラスを拭いていたあたしに店長が声をかけた。


「あんなことがあったんじゃあ、もう客は来ないしね。
もう店を閉めることにした」

言われて見回すと、確かにお客さんはもうヤス兄だけだった。