能力者、という存在が生まれたあの夏。

あたしは高校生だった。


手を触れないで物を動かせたり、刃のような風を送って物や人を切ることができたり。

いわゆるSFの世界で超能力、と呼ばれていたような能力。

そんな危険な人達が一斉に現れたのだ。


現れた、というのは正確じゃない。

彼らはほんの前日まで、あたしと同じ普通の人達だったから。


どうして限られた人達が突然そんな能力を持ったのか。

ある番組で流れた音楽CDが原因らしい、という噂がしばらくして流れた。

能力を持った人達の大半が、その番組を見ていたからだ。


本当かどうかはわからないけど、あたしもヤス兄も、幸いなことに家族達も、

その番組は見ていないせいか、普通の人のままでいられた。