お盆を胸に、カウンターに入る。

そうっと、ちょっとだけ振り向いてみると、

ブラックコーヒーが入ったカップを持ち上げたヤス兄の横顔。

すっかり板についたスーツ姿を見ているだけで胸がぐぅっと締めつけられる気持ちになる。

あぁ、格好いい!

今のまま、広告代理店にいればいいのになあ。

そしたらあのスーツ姿がずっと眺められるのに。


最近ヤス兄は、会社を辞めて能力者反対の団体を立ち上げようかな、なんて話をするからあたしはとっても心配しているんだ。

今日みたいなことを見ると、さらに恐くなる。


暴力なんて使わない、って言ってるけど、相手は能力者だからそんなに簡単にいくんだろうか。